一輌列車 (作詞/糸田ともよ・作曲/及川恒平) ― 2012/11/30
車輪は冷えたレールを噛んで
煙のように舞う雪に 紛れる
揺られて眠っている間(ま)に
いくつの町を過ぎただろう
隣にうつむく少女も いつしか消えていた
座席に本が一冊 置かれているだけ
ここがどこかを確かめたくて
拭いても窓はたちまちに 曇った
列車の刻むリズムに
ふたたび瞼を閉じて
雪降る夢の坂道 ゆらゆら降りてゆく
踏み切りの音 重なり 響いているだけ
目覚めるたびに姿を変えて
隣で本を読む人の 幽(かそ)けさ
一輌だけの列車を
吸いこむ長いトンネル
細かく震える窓から 滴(しずく)がこぼれる
灯(ともしび)ひとつ宿して 心の谷間へ
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