六文銭コンサート『自由』 ― 2019/09/19
傷心の人に感情移入しすぎて自分の古傷もひらき、悪夢にうなされて憔悴してしまうという、よくある、でもちょっとくるしい日々ですが。
15日、主人が予約してくれていた「六文銭」のコンサートに行ってきました。
兵庫県丹波篠山(ささやま)市にある、波之丹州蕎麦処「一会庵」。
ここがコンサート会場です。
月光がふりそそぎ、
外の風も虫たちも自由に出入りする開放的な空間でのコンサートです。
小室等さん、及川恒平さん、四角佳子さん、こむろゆいさん、
4人の異なる声質は、この上なく相性のよい楽器のように厚みのある響きで、胸の奥に届きます。
それは美しい伯母さまの家へ行く道であった
それは木いちごの実る森へ行く道であった
それは夕暮ひそかに電話をかけに行く道であった
・・・で始まり
戦い敗れた故国に帰り
すべてのものの失われたなかに
いたずらに昔ながらに残っている道に立ち
今さら僕は思う
いたずらに昔ながらに残っている道に立ち
今さら僕は思う
右に行くのも左に行くのも僕の自由である
・・・で終わる、
黒田三郎の「道」という詩。
小室等氏の作曲により、歌われます。
敗戦後、戦地から戻り、鹿児島の焼け野原に立ったときに生まれたという黒田氏のこの詩の言葉と思いは、六文銭の最新CD『自由』の核にもなっているかと思われます。
生の歌声は生の思い。
畏いくらいにゆさぶられます。
小室等氏、及川恒平氏による詩もどれも、軽妙に歌われつつも深い。
マイクなしで歌ってくださったアンコールの歌、
いちばん最後の曲、小室さんの「無題」は、庭の虫たちの合唱ともとけあって、切なくもやさしい余韻を残しました。
遠くまで、聴きに行ってよかったなと思います。
六文銭のみなさま、一会庵のみなさま、ありがとうございました。
そして・・・
傷心の人よ、
あなたの「自由」も今は大きな喪失感とともにあるけれど、
うたいたい歌の前奏がきこえてきたら、
ゆっくりと歩きだしてみてください。
2019.夜光席