yakouseki

詩/漕ぐ人2024/06/26

漕ぐ人


夕ぐれの怪魚はその腹に
街の灯りを明滅させながら
自転車乗りをひとり吐き出した


オブラートにくるんでも嚥みこめない
家や塔だけが残り
人形劇の音楽が鳴っている


人語を話す鳥獣たちの声色のはざま
安定しない速度で漕いでいく


夥しい落ち葉を巻き込む


感情を風にあてる


駆動しない後輪は
裏切られ慣れろ


海霧の宵宮に湿り
連なる月の反射板に眩み


存在の異郷に聳える一冊の本まで
迂路を













2022. 『舟』41号より

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