yakouseki

冬 隣(ふゆどなり)2011/10/10

ねむい葉

うかつに手をはなし

峡谷をくるめき降りていく途中



教室の窓のながれゆく

雲をみている遠く

手を振る人もいて



それは電車

   手を振る人もいて

霧の鉄橋をわたり青い

みかんを手渡す人もいて



それは祖母の家

   みかんを手渡す人もいて

時間が止まっているようなのに柱の

時計の音ばかり大きくて



それは恋人からの深夜の電話

   時計の音ばかり大きくて

まぼろしの家の三角屋根にはらはら

雪が降りだして



それはニリンソウのお墓

   雪が降りだして

山懐(やまふところ)の大樹の根方に

ひとつぶの種はねむり



ねむりの底に水はながれ



うす闇のなか



冷たいシーツの角を折りこむ

指ほの白く

舞うように


























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