ねむい葉
うかつに手をはなし
峡谷をくるめき降りていく途中
教室の窓のながれゆく
雲をみている遠く
手を振る人もいて
それは電車
手を振る人もいて
霧の鉄橋をわたり青い
みかんを手渡す人もいて
それは祖母の家
みかんを手渡す人もいて
時間が止まっているようなのに柱の
時計の音ばかり大きくて
それは恋人からの深夜の電話
時計の音ばかり大きくて
まぼろしの家の三角屋根にはらはら
雪が降りだして
それはニリンソウのお墓
雪が降りだして
山懐(やまふところ)の大樹の根方に
ひとつぶの種はねむり
ねむりの底に水はながれ
うす闇のなか
冷たいシーツの角を折りこむ
指ほの白く
舞うように
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