yakouseki

夜明けに2013/04/29

朝がカーテンのすきまに乳白色の指をすべりこませているのをぼんやりとみとめてから未練のある夢にもどったが親しくなっていたはずのひとびとのつどいはすでに散会し飲みかけの果実酒もかたづけられガランとしている心とはおもいのほか広いひろまだ。
ひろまの中心にはまぶたのようにやわらかい蓋がありその下には手すりのない螺旋階段が地下ふかくへぐるぐるとねじこまれているまるで無限小へ向かう巻貝のように先へいくほど昏く細くなるその奥から迎えるような憂いがしきりに頸に巻きついてきていきぐるしいがしばしばここちよくもあるその先へいけるのは一条の思念だけであるという諦念その無辺のかぎろいに兆す詩をわかちあえるものに近づいているやわらかい確信につつみこまれて。
だれもしらないところで掻破された言葉としていきてきた光をしらない一生を読みほぐす酔いはふかくなるほど明晰にかなしみをすくいいきどまりの先の風光を編み怖くないひろさをしめす。それが目覚めであれ死であれあらたに発泡する暁紅の栓を引きぬく音は祝砲。だれもしらないところで鳴りひびくためあくまでも世界はひっそりしているが芳醇な靄は漏れてくる二度とひらかないまぶたのすきまからも。














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