yakouseki

「あしたしたたる」2016/02/22

詩歌探究社『蓮』6号に発表しました私の短歌作品
「あしたしたたる」につきまして、
美術家であり文芸同人誌『がいこつ亭』編集人として評論活動も
されている三神恵爾さんよりご感想をいただきました。
ご了承を得てfacebookより転載させていただきます。
(写真も三神さんによるものです)


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遠い記憶の窓    


前回は詩作品だったが、今回はまた以前のように、ひらがなだけで綴った短歌と、その漢字を当てた回答のような作品を同時にならべたものだ。ひらがなだけの方は、当然音だけでイメージしなければ意味がつかめない。多分こうだろうなと想像しながら回答の方を見ると、まったく違っていたりする。その遊びを含んだイメージのすれ違いこそが、これらの試みの魅力の一つだろう。
そうした感想は前にも書いた覚えがあるが、音で受け止めるイメージと漢字混じりの一行を目で受け止めるイメージとの、近いようで案外遠い感覚はたとえば恋に似ているかもしれない。恋人同士のすれ違う軌道のように、それら二つの組み合わせは完全には一つに結ばれることがなさそうだ。なぜなら、それぞれはそれで独立し主張しあう星の一つなのだから。
今回の漢字を当てた回答の方を見るなら、ずいぶん魅力的なイメージがいくつも並んでいる。昏睡の氷の眼球とか、酷薄な夢だとか、氷のシンバル、あるいは幻燈機の光の洞など。いずれも精密なタッチで描いた鉛筆画のように、どこか暗い森が呼び寄せる妖しい光の点滅に照らし出された、内なる遠い記憶を辿る幻想を強く孕んでいる。そしてそれが、僅かに風に撓んだ硝子の窓のように、小さな揺れる響きをたてている。
                            (三神恵爾facebookより)


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三神さん、ありがとうございます。









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