yakouseki

鼓膜湖2011/09/09

漕ぐたびに水草のからむ櫂を

そっとひきあげて

青い月下

舟底にならんでねむろう

櫂と



どこにいても

深い

湖心とおもう



櫂の

からみつく水草に触れると

舟をかこむ水の輪は

瞳孔のようにひろがり

朽ちかけた指先はすでに濃霧だった



どこまでも薄くなっていく飴のような舌を

まもりたい声なき声

ふりしきる

ここ

鼓膜湖



数百年の四季

交錯する客思しめやぎ



底冷えのする


























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(上の画像はデカルコマニー作品)


*糸田ともよ詩集 『雪意』 発売中

http://books.rakuten.co.jp/rb/%E9%9B%AA%E6%84%8F-%E7%B3%B8%E7%94%B0%E3%81%A8%E3%82%82%E3%82%88-9784877990923/item/11313876/