束見本の思い出 ― 2024/04/18
プレミアムドラマ(令和版?)「舟を編む~私、辞書をつくります」も
佳境に入ってきました。
前々回の放送では、辞書『大渡海』の本文用紙が決まり、
その束見本が登場。
束見本(つかみほん)とは、製本後の仕上がりを確認するために
実際に使用する用紙と同じ紙を使って、無地のまま
(印刷はせず)製本した見本のことです。
2011年に私が詩集『雪意』をつくったとき、
出版社の制作現場によくお邪魔させていただいていて、
本文の用紙も自分で選ばせてもらいました。
素人の私は単純に、裏の文字が透けない厚さの紙を選び、
束見本の完成を楽しみにしていたのですが・・・
出来上がった束見本を見て、
さらに手に持ってみてびっくり。
厚すぎる・・・
そして重すぎる・・・
しかし、束見本とは表紙・カバーや背幅などの寸法を知るためのもので、
気に入らないからという理由で作り直してもらうことはできません。
そのまま作業は進むこととなり、
本の重さをおもうたび、私の気持ちもどんよりと重く
紙選びの失敗を悔やむ日々・・・
そんなある日、
出版社のデザイナーさんから一本の電話が入りました。
「今回、束見本を作った本文用紙は製造中止になっていて、
発行部数に満たないので、別の用紙に変更してほしいと
紙卸さんから連絡が来ました」
と。
私は心の中で叫びました。
「紙の神様、ありがとーーー!!」
と。
選びなおした紙で再度作っていただいた束見本(上)と、
最初の束見本(下)です。
同じページ数で、この違い。
最初の束見本は、開いても紙が立っています。(右上)
理想的な厚さと重さで
『雪意』は完成しました。
思い出深い、まっさらな束見本2冊。
今も大切にしています。
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