結晶宇宙を巡る ① ― Human Insuline― ― 2014/07/07
Human Insuline/佐藤 孝
爽昧の風が繞(かこ)い込む網膜の沼
名残りの月光をみちづれに
どれだけの花たちが入水したことだろう
競うようにふかく
花びらのうすい縁から沼の孤独に蕩け
なめらかな渦になり
芽吹いた場所も季節ももうわからない
わからないことのやすらぎに
最期の吐息を漏らすと
小さな泡はゆるゆる昇り
静まり返った沼のめぐりで
花のかたちに破(わ)れる
上の画像は、科学者であり美術家である佐藤孝氏が、偏光顕微鏡を用いて生み出した結晶世界です。
美と科学の融合ともいうべき佐藤氏の世界に魅せられ、さまざまな素材(医薬品、酸化防止剤、食品添加物、果実などの含有物、ビタミン剤 他)を独自の方法で美しく可視化した数多くの作品(「乳剤版画」と作者は命名しています)の中から数点をお借りし、詩を書く試みを始めます。
身近でありながら誰も視たことのない微視的宇宙を、夢見るような高度(または深度)で遊泳してみたいと思います。
今回ご紹介した作品の被写体はヒトインシュリン。
佐藤孝氏による解説をお読みください。↓
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