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『書棚から歌を』2015/06/02

田中綾 著 『書棚から歌を』が深夜叢書社より刊行されました。



北海道新聞「日曜文芸」で好評連載中の田中綾さんのコラムを、(2009年11月15日~2015年1月18日分まで)この本でまとめて読むことができます。

短歌の引用がある書物、またイメージ喚起力のある一首をモチーフに書かれた小説などを、その短歌作品とともに独自の視点で紹介しています。

著者あとがきには、「どの本も実際に私の「書棚」にあるので、関心領域である戦時下の短歌史、言論統制、労働問題、評伝などが多くなっただろうか」とあります。

なんだかすごい書棚だな、と一瞬怯みますが、大学教授である著者が特に若い学生たちに読んでほしいと言っているだけあって、難解な表現はありません。最近の本も取り上げられています。

過酷な時代や人生を生きた者の切実な思いが、三十一文字という小さな器の中に息づいていて、史実を仔細に知るよりも奥深く胸に迫ります。

無名者の声、今は亡き人の声にも著者はつねに耳を澄ましています。
そういった短歌の引用がある本をこんなにたくさん発掘できる田中綾さんの「聴力」、ただものではありません。

2002年に編んだ私の歌集『水の列車』からの一首も取り上げてくださいました。


この歌の言葉が偶然の出逢いによって、あらたなストーリーを生きることになった経緯が書かれています。


『書棚から歌を』は新書版サイズで、ページ数のわりに軽量なので、気軽に持ち歩けます。
コラムの一回分が見開き2頁におさまっており、どこからでも読めるところも気に入っています。


6月7日、紀伊國屋書店札幌本店にて、『書棚から歌を』刊行記念のイベントがあります。


ぜひ。