短歌研究11月号 ― 2018/10/26

『短歌研究』11月号の「最近刊歌集・歌書評・共選」の頁に、井上法子氏が5冊の歌集について書かれており、『しろいゆりいす』のことも書いてくださっていました。
そのなかでとりあげていただいた7首。
・ねむのはな すすきのほなみ まどろみのふちせにけむるちきゅうのうぶげ
合歓の花 ススキの穂浪 微睡の淵瀬にけむる地球の産毛
・ゆきぐれのゆうぐうもれるこうえんにおきざりのそり おくりものめき
雪暮れの遊具埋もれる公園に置き去りの橇 贈り物めき
・なにをはばんでいたのかもわすれてひさしいくちたさくにわたぼうし
何を阻んでいたのかも忘れて久しい朽ちた柵に綿帽子
・ようやくあえたあおいとうかにこれからをたずねかえすともういない
ようやく逢えた蒼い燈下にこれからを尋ね返すともういない
・ふうようのささめきもたえ こんじょうのはてなきなぎになみだつなみだ
風葉の私語も絶え 紺青の涯なき凪に波立つ泪
・みをやつしたつみおつくし わたつみののどにささったこぼねのひとつ
身を窶し佇つ澪標 海神の喉に刺さった小骨のひとつ
・おやすみ とおなだにこころすててきたいちわをはくぼにうかべて
おやすみ 遠灘に感情棄ててきた一羽を薄暮に浮かべて
「ひと文字ひと文字をゆっくり目で追うことで、言葉の意味よりも前に、自然と音韻を意識させられる。そして不思議なリズムを抱えているうたの多いことに気が付くだろう」「目も耳も心地よく刺激される一冊」とのお言葉に安堵いたしました。
その他の歌集も、書評から魅力を感じ、読んでみたくなりました。
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